英会話的な話。

 ……ネタがない。
 風邪のため3日間外出せず、回復してからは混乱した家の中の整理に明け暮れていたら、すっかり浦島太郎気分である。NY話ができるほどまだ気力が充実していないので、風邪のためお休みしてしまった英会話学校の話でもすることにしよう。
 生活はほとんど不自由していないが今後のコミュニケーションのための最大の課題は、英語である。これはもう間違いない。さすがにどうにかせねばあかんと、週2〜3回英会話教室に通っている。
 個人的に、英会話学校というのは嫌いではない。英語の話せない人々が寄り集まって必死になってコミュニケーションをとろうとするわけなので、微笑ましいし楽しい。ネイティブの人と話すときは申し訳なくなるが、教室で話そうと思うと色々と挑戦できる気楽さが最大の利点だろうか。
 聞き取りは大体大丈夫なので、あとは何とか自分の思いを伝えられるようにしたい――そんな私にとって教室という場は意外に面白い場所なのである。
 しかし、この英会話教室
 ある意味とてもニューヨーク「らしい」様相を呈しており、それがまた興味深い。ものすっごい人種の坩堝なのだ。
 わずか10人程度のクラスなのだが……リビア出身の数学の先生は大人しくたおやかだし、スペイン人の本屋の店員さんはかわいらしい。一番良く教室で話しているのは、コロンビア出身の主婦と、メキシコ出身のヘアサロンの店員さんだろうか。文法が苦手らしくおしゃべりは面白いのに「びゅーてぃふるのスペルって何?」と聞いてきたりする。ベネズエラ出身の心理カウンセラーは教室唯一の男性だ。
 私を含めた韓国やタイ出身のアジア系の人々は話すのは苦手で書くほうができたりするのだが、この手の中南米系やヨーロッパ出身者は文法と書き取りはアヴァンギャルドだが、ものすごくよく話す。見習いたい。
 さて、一番よく話すのはエクアドル出身のおばちゃん(6歳の子持ち)だが、個人的にひそかに好きなのは、イラク人のど派手なお姉さんだったりする。
 にこにこと感じのいい人でファッションについてとても関心が深い。
 初対面のときの会話も…
「私の国ではね、ヒールは美において重要なポイントなのよ。」
「ニューヨーカーはスニーカー人口が多いですよねー」
「そう!ものすごく驚いたわ。でも、ヒールの方がいいのにねぇ。そういう意味で、あなたの靴*1はなかなかいいわよ」
「まぁ、ありがとうございます。」
 等々、インパクトの小さくない入り口だった。
 ただ、確実なのはファッションセンスは日本ともニューヨークとも少々異なるということだ。何といえばいいのか…………一番近いのは、大阪のマダム軍団といえばいいだろうか。
 件の初対面のときは、豹の顔の入ったコートにゼブラ柄のニットという驚愕の取り合わせだった。ド金髪で迫力のある外見の方なので似合っていないわけではないところがむしろ恐ろしい。何よりも、リアルであの取り合わせを着ている人を見ようとはまさか思わなかった。
 常に目を引く極彩色すぎる洋服とじゃらっじゃらっのアクセサリーはおそろいのカラーで揃えるのがルールらしいことには、最近気づいた。豹コートの日も、確か豹柄のパンプスとゼブラ柄のバングルをしていた(逆だったかもしれない)。
 真っ黄色のニットを着ていたときはゴールドの腕輪(ブレスレットではない)を左右の腕に8本つけていたし、先日の真っ赤なタートルのときは重そうな真っ赤なネックレスとお菓子かと思うようなルビー的石がついた指輪をゴロゴロ(?)されていた。非常に驚くべきことに、似合っていないわけではない(2回目)。
 しかし、鮮やかすぎて、毎回むしろ目がくらむ。
 息子のアリー君は普通にかわいい少年の格好なので、もしかするとお国柄ではなくご本人のご趣味なのかもしれないが、そこまで繊細なことを聞ける英語の自信はまだないので言及できていない。
 …………英会話は今後も学び続けたいと思っている。
 ただ、ファッションに関しては、人種の坩堝で学ぶのはやや危険ではないかと時折思ったりするのだが。

*1:ご存知の方は多いだろう。私はエナメルの黒い靴を履いていることが多いのだ。