旦那による題材補完計画1

 最近ネタにさせて頂いている旦那殿ですが、ある日突然「このままだと食べ物ネタばかりだろう」と、当人より日記を寄稿して頂きました。
 えー……以下そのまま転載しますが。
 私も初めて聞いた(笑)研究概要とともに、うっかり真面目な人に見える文面にご注目ください。本人をご存知の方も多い当ブログですが、珍しい「仕事人バージョン(?)」を、お楽しみ頂ければと思います。
(※尚、毎回の楽しみなので頂いたコメントへのレスは私がさせて頂きますが、頂戴したコメントは本人にも読んでもらうつもりです。)


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29歳になりました、ブログ主の夫です。日頃から妻のブログをご愛読いただきましてありがとうございます。妻がNYに来て、このブログを始めるにあたってタイトルを何にするかを2人で話し合ったことを思い出します。

最初の候補は「嫁になってはみたものの in NY」というタイトルでした。なんだそりゃ!嫁になりたくなかったんかい!という僕の反対に従って現在の仮タイトルとなりました。しかし僕は常々思っております。

研究関係ないし。

多少タイトルとの関連をもたせるために、研究ネタを書かせてもらいたいと思います。
いずれかの記事でもありましたが、うちの嫁さんは僕が研究者であるという事は認識しているものの何の専門なのか、そしてどういう立場にあるのかを詳細にとらえているわけではありません。これを機に簡単にご紹介させてもらえればと思います。

僕は1年半ほど前に大学院博士課程を修了して理学博士号を取得し、博士研究員としてNYに留学しております。専門は広い意味での統計物理学、とくに生命現象など平衡から離れた自然現象を物理学的に考える学問です。物理学は実験と理論がかなり乖離している場合もあるのですが*1、僕の分野は双方がかなり近い距離にあることもあって僕は装置も作りますし実験もしますし、理論も考えます。高校の理科の授業で実験実習をされたことがあると思いますので、実験というとそれを思い出して頂ければと思います。理論は高校で習うような物理よりも数学に近いかもしれません。さらに理論では数値計算をして解析的に解く場合もありますのでプログラミングのテクニックも必要とされます。

NYに来てからは生命の起源を物理学から考えるという課題に取り組んでいます。原始生命が誕生したころは現在の生物が行っているような複雑な制御ではなく、物理化学の法則に従うより単純な機構であったと考えています。その原理はいまもって全くの謎です。ルイ-パスツールは「細胞は細胞から生まれる」として自然発生説を否定しました*2が、では一番最初の細胞はいかにして生まれたか、これを実験物理学で解明したいと考えて研究をしています。生命が誕生するためには何が必要か?条件次第で「物理的帰結として」生命が発生するか?地球以外でも生命が誕生する可能性はいかほどか?といった疑問を抱いています。物理学者は物質にしろ宇宙にしろ何にしても「起源」に興味があります。

かなり長くなってしまったので、また後日に自分の立場といいましょうか、研究者ってどんな職業なのかを紹介できればと思います。


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*1:例えば素粒子物理学は理論系では1-3人のグループを組んで全く実験をしませんが、実験系では1000人規模で複数の国家間にまたがる共同プロジェクトとして研究を行っています。

*2:もちろん彼の意図は、腐った肉からうじがわくのは肉から蛆が発生した訳ではなく蠅が卵を産みつけたからだ、という論理を表現したかったのですが